備忘録

あかし

忘れないでいて

 

 

 

愛してたって

過去形で言ったから?

 

 

 

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言葉にして整理したくて

記しておきたくて

長風呂するために風呂を沸かしている。つもりだった。

 

そろそろかなと浴室に向かえば浴槽から溢れかえる冷水

給湯器を確認すればたしかにランプは赤く光っている

 

おかしいと思い赤のカランをひねる。

まわらない。

 

青のカランをひねる。

容易にまわった。全開になっている。

 

 

気も漫ろとはまさにこのことだ、

上の空も良いところだ。

 

 

ヤケになってバスソルトをいつもの2倍半ぶちこんでやった。

 

 

いよいよ最後だ。

12月がやってきた。

 

 

気に入りの寿司屋でたらふくの寿司を食べた

相手は好物のいくらを

わたしは煮穴子をそれぞれ複数貫食べ

なんの気なしに頼んだ真鯛の炙り塩レモンを揃って頬張り

コーヒーゼリーとガトーショコラを各々でたいらげた。

 

重苦しい空気もなくただこれまでと変わらぬようなトーンで、

相手を試すかのように自分たちに永遠はないことを言外に含ませた言葉を交わし、

どれだけ発つのが後ろに倒れようとも私達は今年限りだと意思を確認しあった。

 

プレゼントした枕やセックスを引き合いに

私がいなくなると困るということをあなたは伝えようとする

 

「枕屋の女なんて案外いるよ多分」。私は言う

「もっとハードな趣味の女と出会えるかも」。言葉を重ねる

 

私ほどの女と出会ったことはないとか

枕屋の女がそこら辺に転がってるわけないとか

あなたは言うね。

 

枕もセックスも、それぞれでならばきっと悪くない出会いがこの先も待っている。

ただ、そのすべてが揃うのは私だけだね。

 

 

例えあなたが本当は私のことを愛してなかったとしても、私は愛していたよ

とか言って

そんなことを言って生まれる忘れられなさなんて幸せになれないとか言い返されて

そうだね、“余計な一言“のブーメランだねとか言って。

 

愛していたよって

過去形だったから泣かせてしまった?

 

会えるのもあと3回か、いよいよだね、中国に行くって決まってからもう2ヶ月も経ったんだねって

そんな話をしたから泣いてしまった?

 

きっと違うのだろうと思う

 

つらくて考えないようにしていたことをこうして目の当たりにして、実感がいよいよ深まって

それで心が千切れそうなんだよね

決めたことにまだ感情が追いつかないんだよね

 

 

のらりくらりと躱してきたあなたが

3年越しに、終わり間際だからだとしても、

そうして私に感情を見せてくれて

私の胸で泣いてくれて

嬉しかったよ

今日までよく頑張ったね

頑張ったねっていうのは、決して私との出来事だけに限ったことじゃないよ

あなたはえらい。

だからこの先もきっと大丈夫だよ。

 

 

泣いてる人にかけるにはあまりにもありきたりな言葉ばかりかもしれないけど、考えるよりも先に言葉が出てきて、いま自分の腕の中で泣いている愛する人に対して、本心でそう思っているのだと自分でもわかった。

 

いっぱい愛してくれてありがとうって言ってくれてありがとう

愛してたことをちゃんとわかっててくれて本当にありがとう

 

 

 

 

最後の日、どういう言葉で終わるかなって話をしたね。

さようならかな、またねかな

って私が言って

また会うつもりでいるの?ってあなたは訊きましたね。

それに対して私はなんて答えたっけな。

多分、否定の返事をしたと思う。

 

2年経って連絡を取るなんて野暮だ、新しい男ができてるかもしれないし。2年で帰れるかもわからないし。って言うから

そうだねえ、もしかしたら遠い南の方に引っ越してるかもしれないし。って返したけど、

別に2年経ってもなお私と話したくなったのなら

やっぱり手放し難たかったのなら

今何してるんですかって言ってこれば良いのにって思うよ

 

 

SNS等への掲載を禁じられているからここには書けないけど

立命の学祭にわざわざ買いに行った例の短歌

あの“運命“って、

抗いきれないほどの強さでこみ上げてくる能動的なエネルギーのこともきっと指してる

だから、もしそうならきっとまた会えるから

 

 

 

 

『いつかこれほど愛していたことすらも忘れてしまうそれがまた悲しい』と、あなたもよく知る友人と話していたと聞かせた時、

そうですね、僕は忘れることが得意だから

とかって言ったね

 

でも、お願い

私があなたを愛していたことだけでいいから

お願い、忘れないでいて

あなたが誰かに愛されていたこと

心から大切に思われていたこと

あなたにはその価値がじゅうぶんにあること

絶対に忘れないでいて

そんで僅かでいいから、わたしのことも忘れないでいて